1. 授業や制作など
後半のプロジェクトは Linoprint(リノグラフ), Dry point(ドライポイント), 製本と個人制 作の四本立てでした。個人制作は、習得した技術を二つ以上組み合わせた、これまでの作品の発展形のプロジェクトです。
リノグラフはリノリウム、ソフトリノリウム、木版(これは木版画になりますが)の三種のメディウムから選び、私はソフトリノリウムにしました。課題内容はセルフポートレイトで、自分の姿を映さずに自己表現をするという条件でした。リノリウムは厚みがあるため、ローラーを通すと紙に凹凸のつくエンボス加工ができます。
ドライポイントはプラスチック板に先端が鋭利な針などで溝を掘り、溝に残ったインクを転写する手法です。細かな描写ができるので、A4 板を分割して小さなシリーズを作っている人もいました。
製本はこれまでに製作した中で使わなかったプリントを再利用し、和綴じでモノプリントをまとめました。版を折るのではなく、単一ページをまとめたかったため、第一希望としては、糊を使った無線綴じがしたかったのですが、必要な糊がないため糸で綴じる製法になりました。
個人制作は CMYK プリントとエンボス加工を利用した、写真サイズの小さなプリントシリーズにしました。テーマは家庭環境の不明瞭性で、家族旅行で撮った写真を参考画像として制作しました。この留学で初めて親元を離れ、これまであまり公にしていなかった家族との繋がりについて見つめ直しました。周囲は SNS で家族、友人の顔をそのまま投稿する人が多い中、私は家族の希望もあり一度も彼らの顔はおろか、家族と一緒にいることがわかるような投稿もしてきませんでした。存在するが可視化されない関係として、顔や人物特定には至らない抽象度の版を作り、展示では目につきやすい位置に最も薄い印刷を掲示しました。写真やガラクタが詰まった箱のイメージで展示空間を設置し、版の他にチケットや切手、スケジュール帳など旅行や生活に関連するものを散りばめました。
機械編み(Knitwear Design)クラス:
中間報告以降の個人プロジェクトであるセーター作りがいよいよ完結しました!型紙作りや、編み数の計算、そして何より所要時間の分からない実際の制作を終え、実際に着用できるサマーニットが完成しました。前面、背面、腕二本を編み終えた後に、裾と袖の仕上げを行うのですが、これが一番難しかったです。編み終えたパーツを再度リブ編み専用のダブルベッドに設置し、太い糸で編むのは注意点ばかりで中々スムーズに行きませんでした。袖のリブ編み以外は細めの黒い糸で柔らかく薄めのニットを、袖には蛍光の手編み用毛糸でしっかりとした袖口を作りました。糸の太さに差があるため、ゲージ数や重しの量などで均等に力を加えることが困難でしたが、なんとか全てを編み終えました。機械で編んだ時間は 17~18 時間ほどで、全てのパーツを編み合わせるのに 10 時間ほどかかったと思います。それでも全て手編みで仕上げるよりは革新的に早く、とても楽しかったので編み機の購入も検討しています。
平面絵画アトリエ(Painting Interactions)クラス:
中間報告までに制作していた作品の続きで、透明なプレートにパリで見つけたモチーフを描くシリーズを提出しました。中間報告では壁にかけて展示したのですが、制作意図として両面から鑑賞できるような展示方法を模索するべきとアドバイスを受けました。最終の講評ではプレートを屏風のように繋げて展示しました。
フランス語入門(French for Paris):
最終課題はオリジナルのパリ観光ガイドの制作と、パンフレットのトレイラービデオの制作でした。語学授業でも最終課題は制作形なのは美大らしいなと感じました。内容は比較的自由で、オススメのレストラン、美術館、カフェなどを取り上げ、パリで体験したことのブログをフランス語で書きました。ビデオは2分程度のパンフレット紹介で、自分で話したフランス語を聞くのが不思議な感覚でした。
2. 暮らし
本格的に春になり、晴れた日は目を開けていられないほど日差しが眩しいのでサングラス必須です。 各地の庭にも花が咲き、青々とした木々に癒されながら本を読んでいる人の姿をよく見ます。気温は 30℃になる日もあり、ノースリーブでちょうどいいくらい暑いです。
新しい同居人がどちらも料理好きで、週末にみんなで料理を振る舞ったりしています。先週はラーメンを作ってみたいと誘われ、今週は寿司とセビチェを一緒に作りました。セビチェはライム液にハマチの刺身を浸すだけで調理される不思議な料理で、キュウリやトマトと混ぜた魚介サラダのような感じでした。新鮮な魚と酢飯を用意し、久しぶりに食べた日本食はとても美味しかったです。インド人の同居人は初めて生魚を食べる体験だったそうで、ワサビの独特の風味にハマっていました。
学期の終わりが近づいてきている焦りの中、できるだけ多くの美術館に足を運んでいます。Musée de l'Armée, La Cité de l'Architecture & du Patrimoine, Musée du Quai Branly などはその一部ですが、まだこんなにも知らなかった美術館があることに驚いています。ルーブルやオルセーに比べると人混みも少なく、ゆったり回ることができるのが嬉しいです。
3. 現地の様子
今月はフランスの地方にいる友人を訪れる機会が多く、Angers と Le Havre に遊びに行きました。 Angers は古い建築が数多く保存されている歴史ある街で、古城の Château d’Angers をじっくり鑑賞しました。パリから日帰りで旅行できる気軽さも魅力的で、商業化と観光化が進んだパリと比べると地域色やフランスらしさをゆったり感じることができます。
Le Havre はイギリス海峡に面した港町で、初めてフランスの海を見ることができました!モネの日の出も有名な、印象派画家たちが見た景色に癒されました。Mu MA(Museum of Modern Art André Malraux)には多くの印象派絵画と近代アートが展示されており、見応えがありました。友人の大学を見学させてもらい、夜には演劇サークルの一年の集大成であるミュージカルを観に行きました。大学や街が小さなコミュニティだからこそみんなの仲がよく、一緒に市場の生牡蠣を食べ、メロンパン作りに混ぜてもらい、暖かく歓迎してもらえたのが素敵な思い出です。
Angers に遊びに行った友人と意気投合し、三泊四日で Lyon と Marseille を訪れました。Lyon ではノートルダム大聖堂、ローマ劇場跡、LUGDUNUM、映画とミニチュア博物館を回りました。ローマ劇場跡の博物館である LUGDUNUM はノーマークだったのですが、ローマ劇場周辺の丘の中に建てられた五階建ての大きな博物館で、ローマ時代からの出土物から紐解くリヨンの街の歴史を知ることができ、非常に面白かったです。
4. トラブル
特になし
5. 語学の状況
美術館のキャプションなどは以前よりスラスラ読めるようになり、調べる必要がある頻度も減りました。サイトでチケットを予約する際なども、仏語表示のままで進めることが増えました。まだまだリスニング力はなく、即座に反応することは難しいので、今後もフランス語の学習は続けていきたいです。