1. 授業や制作など
3 月は、1日から17日までが授業期間だったので、その間のお話をします。
3月は、対面の授業には少し慣れ余裕ができたものの、課題の締め切りに追われた月でした。
2月のマンスリーレポートでも説明したように、Unit 全体の課題は大きく分けて、Critical Practice Project (CPP)、 Project Presentation, Personal Archive の3つがあります。また今回のCPP では、Film とPublication という二つの課題がありました。それぞれの課題の概略は、以下の通りです。
Film:
画像や音声の素材を収集し、それらを用いて 20 秒から 2 分のショートフィルムを制作する。タイトル、概略も考えること。
フィルムのトーン(雰囲気)は、哲学的、情報的、詩的、破壊的、風刺的、皮肉的なものが好ましい。映像は、物語より、視覚的な関連性を重視。
Adobe Premiere Pro を推奨。
画像や音声の素材を収集し、それらを用いて 20 秒から 2 分のショートフィルムを制作する。タイトル、概略も考えること。
フィルムのトーン(雰囲気)は、哲学的、情報的、詩的、破壊的、風刺的、皮肉的なものが好ましい。映像は、物語より、視覚的な関連性を重視。
Adobe Premiere Pro を推奨。
Publication:
Film に関連した出版物を制作する。
Publication と言えるもの(本、コミック、画集、ゲームなど)であれば、何を制作しても構わない。タイトル、表紙のデザイン、概要やあらすじも考えること。
完成した作品は、3月14日の Book Fair で展示する。
Film に関連した出版物を制作する。
Publication と言えるもの(本、コミック、画集、ゲームなど)であれば、何を制作しても構わない。タイトル、表紙のデザイン、概要やあらすじも考えること。
完成した作品は、3月14日の Book Fair で展示する。
私は、「Division and Individual」というテーマで、一分ほどの動画と、絵本を制作しました。
Film とPublication のどちらも、授業の中で発表、課題として提出するまでの間に、それぞれ2回ほど講評を受ける機会がありました。うち1回は、グループチュートリアルといって、グループのみんなでそれぞれの作品を鑑賞しながら、アドバイスを受けたり、先生からの質疑応答に答えたりするかたちのものです。例えば、Film のグループチュートリアルでは、制作途中のショートフィルムを見終えた後に、「この映像の尺は、短くするべきか、長くするべきか、それとも今のままで良いか。」というアンケートが生徒たちに採られ、挙手をし、またその理由を答えるというものがありました。生徒自身が、別の生徒が制作している作品に対して、直接的なアドバイスをするという体験は、精華ではあまり経験してこなかったことであったので新鮮でした。もう1回に関しては、自由な制作の時間に、先生達がそれぞれの生徒の席を周り、一対一で講評を受けるかたちでした。その講評がある日は、できるだけ授業を休むことのないよう、事前にメールが来ます。複数で意見交換をする機会と、一対一で意見を深め合う機会のどちらもがあるところが、とても素晴らしいと思いました。
また、動画の制作では、Adobe Premiere Pro を使用しました。精華のキャラクターデザインコースでは、ほとんどの Adobe ソフトを使用できるライセンスを入学と同時にいただくことができますが、今回のUnit7 の課題ではそれがとても役に立ちました。全ての Unit がそうであるかはわかりませんが、少なくとも Adobe ソフトが問題なく動作する程度の PC は、授業を受ける上で必須のようです。
また、動画の制作では、Adobe Premiere Pro を使用しました。精華のキャラクターデザインコースでは、ほとんどの Adobe ソフトを使用できるライセンスを入学と同時にいただくことができますが、今回のUnit7 の課題ではそれがとても役に立ちました。全ての Unit がそうであるかはわかりませんが、少なくとも Adobe ソフトが問題なく動作する程度の PC は、授業を受ける上で必須のようです。
Publication で制作した作品を展示しあう Book Fair では、Camberwell College に程近い、Peckham Pelican というバーのような場所で、テーブルの上にそれぞれの出版物を並べて鑑賞しました。先生方含め皆お酒を飲みながらであったので、私も少しだけ飲んでいましたが、一応は授業中であるはずの時間に飲酒をしながら課題の講評をするという状況に、大きな文化の差を感じました。他の生徒の作品には、綺麗なイラストが描かれたタロットカードのようなものや、コミック本、パズルのようなものや、面白い仕掛けのあるアートブックなど多様なものがありました。全体的にやや暗めなトーンの作品が多い中で、私の制作した子ども向けの絵本は少し異質にも感じましたが、それを見た他の生徒達が話しかけにきてくれたりしたことがとても嬉しかったです。
Book Fair が終わるまでの間は、とにかくそれらの CPP の課題制作に必死で、Presentation や Archive の作成にまで手が回らず、14日から16日の三日間でほぼ全てを完成させなければならなくなってしまい、それがとても大変でした。実際、15日と16日の二日間は、ほとんど寝ないで 18 時間ぶっ通しの勢いで課題をしていました。特に作品の意図やそこから得た学びを説明することに関しては、どうしても内容が抽象的かつ難解になってしまいがちなので、翻訳機を使って英文を書こうとすると、自然に読める程度の文章に修正するまでがかえって手間になってしまいます。それ故に、文章のほとんどの部分を自分の力のみで書く必要があり、それに想像以上に時間がかかっていました。次の Unit8 ではもう少し計画的に課題を進めるよう、意識しようと思います。
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Book Fair |
2. 暮らし
寮での暮らしは、とても快適です。
寮での暮らしは、とても快適です。
なぜか自分の部屋だけ停電したり、別のフロアの水道管が故障して建物全体が断水したりと、定期的に何かしらのトラブルは発生しますが、それらの原因がすぐに特定され、大抵数時間以内には修理が終わっているという点では、とても良い寮だと思います。自分で修理業者を呼ぶ必要がない、というのは寮暮らしの大きなメリットです。
自炊をすることにも、かなり慣れてきました。しかし、そこで気になってくるのがやはり食費です。2月のマンスリーレポートでは、イギリス生活でかかる食費は日本の平均的な食費の 1.5〜2 倍程度と書きましたが、自炊に慣れて食べるものの幅が広がるにつれ、だんだんとお金がかかるようになってきました。節約すればある程度の金額で抑えられますが、少し手を広げると一気に高くついてしまうのが、ロンドンの物価という感じです。例えば、鶏肉のささみであれば1パック£2.50 程度ですが、それがもも肉になると同じくらいの量のでも£5.0 くらいにまで上がります。サーモンや白身魚も同じくらいの値段がします。3月は、値段をあまり考えずかなり贅沢に食材を使っていたので、4月は節約も一つの目標に頑張ろうと思います。
3. 現地の様子
Camberwell の街並みは、変わらずといった感じですが、これにも大分慣れました。
LIDL という、寮から少し離れたスーパーから帰る途中、道路を走っていたトラックから男性がいきなり降りてきて、前を走っていた乗用車の窓や扉を思い切り蹴ったり殴ったりした後で暴言を浴びせるという場面に遭遇したりもしましたが、そういう時は街を歩いている他の人たちと同じように素通りすれば大丈夫です。観光地に訪れた時もそうですが、常に貴重品を気にかけるなど、日本にいたときにはなかった良い警戒心が身についたと思います。
3月は、17日以降は授業もなく休暇だったので、いくつかの場所にお出かけもしました。
美術館は、Tate Modern と Saatchi Gallery に行きました。Tate Modern は、Natalie Bell と Blavatnik という二つの建物から構成されており、世界中の様々な近現代美術作品が展示されている大きな美術館です。どれか一つのジャンルを深掘りするというより、多様な近現代美術の作品が網羅的に展示されていて、誰もが聞いたことのあるような巨匠の作品を実際に鑑賞することもできますし、現代美術に興味がなくてもどれか一つはお気に入りが見つかるような場所です。私は現代美術が大好きで、いつかは必ず訪れてみたいと思っていたので、とても楽しかったです。Tate Modern からは、セントポール大聖堂も綺麗に見ることができます。Saatchi Gallery は、King’s Road というファッションで有名なストリートに訪れたついでに入ってみたのですが、こちらもとても良い美術館でした。National Gallery や Tate Britten のように大きな美術館ではありませんが、こちらも有名な現代美術館です。私は、FLOWERS という特別展示を鑑賞しました。花をテーマにした、絵画、押し花で作られたアート作品、彫刻、刺繍、ファッションデザイン、刺青の写真展など、様々な美しい作品を見ることができます。一番のお気に入りは、刺青の写真で、こういった展示であまり人体に描かれたものについての作品を見たことがなかったので、とても惹き込まれました。草間彌生さんや、村上隆さんといった日本の作家の方達の作品も多く見かけました。イギリスの美術館は大抵の常設展示が無料で鑑賞できますが、この FLOWERS のような特別展示ではチケットの購入が必要です。この展示では、私は学割で£12 程を払いました。イギリスは、美術館のチケットやお土産売り場、その他の施設でも、多くの場所に学割の制度があるので、一度聞いてみるとお得です。
また、3 月 30 日からはサマータイムが始まりました!時間が 1 時間早まり、日本との時差は 8 時間になりました。
イギリスに来たばかりの頃は、夕方の4時ごろにはもう暗くなり始めていたのに、サマータイムになってからは夕方の7時を過ぎてもまだまだ明るく、時間の感覚が狂いそうです。これからさらに日が長くなり、帰国する予定の日頃にはちょうど夏至がきて、その時には夜の9時を超えてもまだ明るいそうなので、とても不思議な感じがします。
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LIDL に置かれている日本のお菓子 |
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Saatchi Gallery |
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Tate Modern |
4. トラブル
大きなトラブルは特になかったので、小さなトラブルや不満点を少しだけ書いておきます。
火災報知器は相変わらずよく鳴ります。3月から、水曜日の昼間に訓練として数秒間火災報知器が鳴るようになったので、誤報も合わせて本当によく鳴ります。ヘッドホンをしていたとしても驚くくらいの音量なので、そこそこにストレスです。
街を歩いていて怖い思いをしたようなことはほとんどありませんが、一度、Tate Morden のすぐ横のテムズ川で写真を撮っていたとき、通りがかりの男性に真横で大声で叫ばれました。何かを言われたというわけではなく、ただ驚かせてやろうといったふうの大声でした。その後、他の人に同じようなことをしていた様子はなかったので、アジア人を見かけたからなのか、女性だったからなのか、外見が子どものようだったからなのか、それとも本当に適当だったのか、理由はわかりません。叫ばれた一瞬は驚きましたが、恐怖というよりは疑問の残る体験でした。
イギリス生活の中の今一番の不満点は、美味しいアイスコーヒーがないことです。私は、日本にいた時は毎日コーヒーを飲むくらいのコーヒー好きで、特にアイスラテやアイスコーヒーが好きなのですが、イギリスには美味しいアイスコーヒーが全くありません。そもそもコーヒーがあまりありません。
まずスーパーですが、スーパーにはお湯で溶かすタイプのインスタントコーヒーがいくつか売っています。しかし、例えば日本のネスカフェや小川珈琲のボトルのような、アイスコーヒーのボトルはいまだに一度も見かけていません。また、スターバックスのチルドカップのカフェラテやキャラメルラテ、イギリスメーカーのカフェモカなどのカップは、大抵どこの場所でも売っていますが、そのほとんどがとても甘くミルクもたっぷりなので、コーヒーの味はほとんどしません。
街中のコーヒースタンドはどうかというと、イギリスには Costa Coffee がとてもたくさんあるので、Costa に行くとある程度美味しいコーヒーを飲むことはできます。スタバは、ロンドンの中心街や主要駅の付近にはありますが、ロンドン全域で見れば数はとても少ないです。そのほかに見かけるチェーンのコーヒースタンドは、PRET というオーガニックコーヒーのお店があり、その他のお店と比べると少し味は異なりますが、ここのラテも美味しかったです。
ただし、アイスコーヒーとなると、そういったコーヒースタンドやカフェに行っても、なかなか出会うことができていません。そもそも、イギリスはアイスコーヒーではなくアイスアメリカーノが主流なようなので、アイスコーヒーという存在自体が珍しいのです。暮らしの中の小さな不満ではありますが、まさか日本の恋しい味が、アイスコーヒーになるとは思っても見ませんでした。
それはさておき、私は紅茶もコーヒーと同じくらい大好きなので、イギリスにいる間はコーヒーは我慢して、紅茶の良さを楽しもうと思います。
5. 語学の状況
Project Presentation や Personal Archive のような課題で、英文を書く機会が多い一ヶ月だったので、特に書き言葉の面で英語力は向上したと思います。
話し言葉の面では、特に日常的に使うフレーズなどは、来た当初よりもスムーズに出てくるようになりました。また、観光先で買い物をする際に何かを尋ねたり、行き方を尋ねたりすることも、躊躇わずにできるようになってきました。そのような点では、成長できたと思います。
ただ、休暇に入り、2月に比べて一人でいる時間が増えたので、英語を話したり聞いたりする機会は少し減ってしましました。インターネットを通して、日本のコンテンツを見たり日本の友人や家族と簡単に連絡を取れることには、とても助けになっている一方で、なかなか英語漬けの生活とはいきません。学期が始まる4月後半、5月は、話し言葉としての英語を伸ばせるように努力しようと思います。
6. キングストン大学
3 月の初めに、辻田先生にご一緒して Kingston University にお邪魔しました。
Kingston の街並みは、Camberwell に比べるととても穏やかで、大学の周りにはゆったりとした小川が流れ、イギリスらしい小さな可愛いお家が立ち並んでいた光景が印象的でした。大学の周りが、そのように穏やかな住宅街であるのに対して、駅の周りには様々なお店が立ち並び、ローカルな店舗から聞き慣れたお店の入るモールまで幅広く揃っていたので、長期間暮らすことにも適した環境だと思いました。
大学の建物の雰囲気は、Camberwell College of Arts と似たものを感じさせるものでしたが、工房やスタジオは Camberwell より広い印象でした。授業も少しだけ見学させていただきました。アニメーションの課題の講評のような授業を見せていただいたのですが、たくさんの面白いアニメーションを鑑賞することができました。Camberwell の授業で見たクラスメイト達の作品とはまた一風違った作品ばかりで、とても刺激になりました。
4月に入ってからも、National Gallery や Rye など、色々と出かけているので、また4月のマンスリーレポートでお伝えします。